山の自然学クラブ 事務局ブログ

事務局へ寄せられた、会の活動報告や、会員のみなさまのご活躍を発信します。絵日記担当:中村が更新しています。

新型コロナウイルス感染症に関するご案内に関連して

当会では(当面)social distancing と physical distancingを使い分けます

社会距離拡大戦略(social distancing) は、感染症の拡散を停止または減速させることを目的とした医薬品を使わない感染抑制のための手段として使用されている言葉です。
それは、人と人との間に物理的な距離・接触機会・時間をおく/とることによって、人が密接な接触を行う機会を減少させる方策のこと となります。
典型的な方策として、他者から一定の距離を保つこと(目的となる対象・ウイルス、時と場合により距離の取り方等は変わってきます)や、大きなグループでの集まりを避けることがわかりやすい対応方法のひとつです。
社会距離を置く目的は、感染症のある人と感染していない人との接触の可能性を減らし、病気の伝染、罹患率、そして最終的には死亡率を最小限にすること となります。

日本語での表現としては、「社会(的)距離戦略」、「人的接触距離の確保」、「社会的距離の確保」、片仮名で転写した「ソーシャル・ディスタンシング」やわかりやすく言い換えて「人混みを避ける」などがあるようです。
これは、前記の social distancing(社会距離拡大戦略)を訳したり転用しているわけですが、
ここのところ 新型コロナウイルスの感染防止対策で「ソーシャルディスタンスを取りましょう」と案内(指示/要請)されているようです。

公衆衛生戦略分野で使用されている<social distancing>は本来この用語が使用されている
社会学用語としての<social distance>の訳語である社会的距離(ソーシャルディスタンス)とは本来はことなる概念であり、分けて考える・使用するべきものでもあると考えます。
日本語ではsocial distancingの訳語としても認知されてきており、英語でも物理的な対人間の距離を示す語としてあまり区別なく用いられることが多いようですが、社会的分断や人・集団・組織の区別につながる可能性もあり、この言葉の使い方には気をつけたいと考えます。

今回2019年から続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期において 世界保健機関(WHO)は感染を防止するのはあくまで物理的な距離であり、人の社会的なつながりとは区別して考えるべき(注:かなり意訳/略していますので、正確な表現とは言えないかもしれません)という概念に基づき、「社会的」(social) 距離の代わりに「物理的」(physical) 距離という用語を用いるよう提案しています。
筆者はこの意見に強く賛同します。 したがいまして、今後、当会事務局としては この二つの用語は場面に応じて使い分けるようにしたいと考えています。
つまり 生き物同士(人と人を含む)の物理的な距離については physical distancingを使用します。日本語で話す場合は身体的距離、物理的距離などの言葉は言いにくいし、わかりにくいので、<ふぃじかるでぃすたんす>と当面は表現したいと考えています。(どちらもすでに広く使われていますので、他の方や団体が使用することに関して申し上げるものではありません。)

2020年5月29日記
特定非営利活動法人山の自然学クラブ副理事長 中村華子