山の自然学クラブ 事務局ブログ

事務局へ寄せられた、会の活動報告や、会員のみなさまのご活躍を発信します。絵日記担当:中村が更新しています。

2020年1月17日「千葉セクションのGSSP提案」が承認

中期更新世が「チバニアン(Chibanian)」と名付けられます

2020年1月17日「千葉セクションのGSSP提案」が承認

嬉しいニュースが届きました。
広く報道されていますが先日 2020年1月17日に韓国の釜山において開催されていた国際地質科学連合(IUGS)で
国際境界模式層断面とポイント(GSSP:GlobalBoundaryStratotypeSectionandPoint)の審議が行われていました。
その審議において「千葉セクションのGSSP提案」が承認されたそうです。
これにより「千葉セクション」は前期‐中期更新世境界のGSSPとして認定され、地質時代の中期更新世(約77万4千年前〜約12万9千年前)が、「チバニアン(Chibanian)」と名付けられることとなりました。
国際地質科学連合は、それぞれの地質時代の境界を地球上で最もよく示す地層を1つだけ選び、「国際境界模式層断面とポイント」として認定しています。
千葉セクションが日本初のGSSPとして認定されたことにより、日本の地名に由来した地質時代の名称がはじめて誕生することになりました。

(注)国際地質科学連合における審査に関する部分は 産業総合研究所(プレスリリース https://www.aist.go.jp/aist_j/news/pr20200117_2.html)や国立極地研究所https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20200117.html)などから該当部分を引用させていただきました。


山の自然学クラブでは、2019年5月に傍島理事の発案、企画により 首都圏講座 「新緑を歩く~養老渓谷チバニアン~」を実施、参加のみなさんで新緑の房総を観察しました。
そのときの様子は2019年5月18日の ブログにアップしてあります。
http://shizen.hatenablog.jp/entry/20190518shizen.hatenablog.jp

また、今年の会報に、資料を含めた報告が掲載される予定です(現在、会報の編集作業中です)。

国際年代層序表(日本地質学会が公開している日本語版)の中から一番新しい時代を抜き出して表示します(国際年代層序表部分)。この表は、最新の研究成果を元に国際層序委員会の審議によって常に更新されています。
(図引用: http://www.stratigraphy.org/ICSchart/ChronostratChart2019-05Japanese.pdf

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IUGS_国際年代層序表2019-05から部分

この中のGSSPが定められていない一区分・中期更新世が今回の「チバニアン」と命名されることになった時代です。
2019年5月の更新では、更新世中期の下限が、78.1万年前から77.3万年前に変更されたそうです。2016年版では、78.1万年前となっているほか、完新統/世が未分類となっています。
更新世中期の下限年代に関する研究として、この露頭にも含まれている白尾凝灰岩(木曽の御嶽山の火山灰)の中に含まれるジルコン粒年代を測定したものがあり、それらの研究結果によりわかったものだそうです。地磁気逆転の場所は白尾凝灰岩よりも80cm上にありますので、その間の堆積年代が検討されたようです。

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IUGS_国際年代層序表2016-12から部分


研究がどんどん進んで、分類なども変更されることが多くあります。この中の 1ページを身近に拝見することができた感じで、嬉しいです。
これから千葉セクションの露頭現地などは、いろいろな教育、研究に活用される機会が増えるでしょう。
私たちも再度、観察しに行きたいと思います。

模式層断面登録の条件には、研究や観察ができること、つまり「誰でもアクセスが可能であること」、「研究の自由と地層の保存が確約されていること」なども登録の条件になっているそうです。このことで、いくつか難しい対応があったことなどが報じられてきましたが、ともかく、大切に守られる体制が永続的に、しっかり維持されることを願いたいと思います。

日本列島は新しい時代の地層が豊富で、しかも地殻変動が激しいため、新しい岩石や地層が観察できる場所やチャンスが多いことは、上高地などで原山先生からも伺ってきました。千葉セクションの露頭もわずか70~12万年前ほど前の時代に、海底に堆積した地層が隆起して見られるものです。
また、日本列島は太平洋に面していて海流によって運ばれてくる物質(土砂や火山灰等の他、化石、花粉、など)が多いことなども特徴になると思います。世界有数の火山活動が盛んな地域にもあたっていて、地層時代の特定にも役に立ちます。

これからの研究の進展も楽しみにしたいと思います。そして、そのような自然の現場を観察する機会をたくさん作っていきたいと思います。