山の自然学クラブ 事務局ブログ

事務局へ寄せられた、会の活動報告や、会員のみなさまのご活躍を発信します。絵日記担当:中村が更新しています。

2018年7月14日~16日三陸現地講座 石巻~牡鹿半島・雄勝(2)牡鹿半島の観察

2018年7月15日 鎌田先生との観察会・牡鹿半島

石巻牡鹿半島の自然観察会・地質編「牡鹿半島不思議発見! ~行ってみよう、見てみよう。地元学・自然学」

山の自然学クラブ三陸の自然観察会「牡鹿半島雄勝をめぐる ~2億年・地球の旅~」at 牡鹿半島石巻の2日目

2018年7月15日は、石巻牡鹿半島の自然観察会・地質編「牡鹿半島不思議発見! ~行ってみよう、見てみよう。地元学・自然学」を実施しました。
三陸現地講座2018年:7月15日・牡鹿半島の自然観察会 - Google マイマップ

現地・日帰り参加の方は石巻駅前で集合して頂き、バスに乗り込みます。バスはちょうど座席がいっぱいになりました。感謝感謝です。

牡鹿地区の地層はおおむね南に行くほど新しいそうです。ジュラ紀(約2億年~1.45億年前)から白亜紀(1.45億年~6600万年前)の初期にかけて堆積した地層が分布しているそうで、ジュラ紀の地層は古い方から「月の浦累層(月の浦/侍浜部層)」、「荻の浜累層(狐崎/牧の浜/福貴浦部層)」「鮎川累層」などと、この地域の地名から名前が付けられて分類されています。この時代の南三陸(南部北上)は、緯度の低いアジア東縁部から徐々に北に移動してきている時期で、様々な堆積環境や特徴のある岩石が時代を追って順に見られ、その経過については今でも議論がされているそうです。

f:id:shizengaku:20180722163803j:plain
ジュラ期中期(約1.7億年くらい前)の地層である「牡鹿層群・月の浦累層」は、井内石などを作る地層の上(新しい時代)に位置する地層で、一番最初に堆積した層が礫岩で、荻浜小学校の裏手ではその岩石が観察できます。化石も見つかるそうですが、きょうはゆっくり探す時間がなくて残念でした!

そのあとは今日は南から回ることにしていました。このあたりでは新しい(!)金華山を遠望できる御番所公園へ向かいます。
f:id:shizengaku:20180722163830j:plain
(実際当日はガスが出てしまって金華山が見えなかったので、写真は6月の下見で撮影したものです;)金華山はマグマが固まってできた岩石からできていることを説明してもらいました。花崗岩質の岩からできているため、白っぽく見えます。
足下の御番所山~半島先端部は玄武岩安山岩などの火砕岩からできているので黒っぽく見えるのだそうです。公園内では地表が覆われてその岩石(山鳥累層)は見られませんが、海岸に降りると熔岩からできた石を見ることができます。

地島南端のドウメキ浜の地名から名付けられた「ドウメキ砂岩」という岩石が鮎川港の南の海岸にも分布しています。田代島に広く見られるのだそうですが、海岸に降りて観察してみました。
f:id:shizengaku:20180722164056j:plain
この岩石は真っ白の地色に、オレンジ色の線が入っています。このような石は、乾燥した大陸の内陸部でないと、できないのだそうです。砂岩なので、砂がたくさん流れてくるところでないと堆積しません。河川を流れてきた砂がどのように堆積したのかがわかる特徴的な地層なのだそうです。また、一部に火山灰の層などがありましたが、泥の層が少ないなどの特徴もみられるそうです。この地域が当時大陸の一部であったことを示す重要な地層です。
 
岩石ももちろん珍しくて面白かったのですが、青い海と白い石・崖のコントラストが美しい、日本ではあまり他では見られない貴重な景観でもあります。このような海岸の風景をもっと活用できないのかな、とも思ってしまいました。海崖は、ちょうど海岸植物のお花が咲いている時期で、こちらもきれいでした。石巻でも珍しくなってしまっている、いくつかの海岸植物が美しい花を付けていました。

牡鹿半島にはたくさんの褶曲構造が観察できることが知られています。そのうちの有名な露頭が福貴浦の周辺で見られます。ジュラ紀の荻の浜層という砂岩・泥岩が交互に堆積した岩石が分布しています。褶曲した構造は中心が低くなっている(窪んで見える)場合 向斜構造、盛り上がって曲がるのを背斜構造といいます。背斜の場合、押されて盛り上がるので、山になったところの上部は隙間や切れ目がはいるため浸食されやすく、なかなかきれいに残ることはないそうです。
f:id:shizengaku:20180722164158j:plain
福貴浦の先端にある海岸の褶曲は対岸から見えるのですが、すこし沈下してわかりにくくなってしまいました。道路の脇で、小さめな背斜構造がよく観察できます。

この地層からは生き物の痕跡を示す化石がたくさん見つかるのだそうです。そこで、石がたくさん転がっている海岸に行ってみました。海岸でみなさん一緒に化石探しです。
f:id:shizengaku:20180722164257j:plain 
井内石などでよく見られる、海底に潜ったあとなどの化石もたくさん見つかりましたが、先生からは「この地層で代表的であり、珍しい”Zoophycos”という生き物の作った生痕化石を探してみましょう」との課題が。先生から見本を教えてもらって探してみました。
しばらく探すと、いくつか見つかりました!

ほうきで掃いたような、きれいな模様です。確かにあまり他では見ないような...
「それで、どんな生き物なのですか?」との質問には、「実はよくわかっていないのです」とのお答え! ミミズのような生き物の掘った(後ずさりした)ものだと考えられてはいるようですが、うーん、そうなんだ、まだよくわからないこともたくさんあるんだな... と妙に納得もしてしまったのでした;;

○○ ★ ○○ ★ ○○
この日の観察は、このあたりで時間切れに。バスに乗り込んで石巻市街へ戻りました。
いろんな地層が岩石、化石を観察できましたが、お子さんたちはもっと化石探しをしたかったかもしれません。現地で観察し、自分で歩いていろんな物を見つける楽しみは格別です。
最近は工事も多くてなかなか自由に海岸に入れる場所が少なくなってしまっていますが、見つかりやすい場所を探して、観察してみるなどもよいかもしれないといました。よく調べてみたいと思います。
この日は盛りだくさんの一日でもありましたが、牡鹿半島ではまだまだ今回観察できなかった場所もたくさんあります! 鎌田先生と帰り道に、もっと下見もして、たくさんの箇所を見て回りたいねぇ...と話し合いながら帰って参りました。

ご案内下さった鎌田先生、ご参加下さったみなさま、運営にご協力頂いたみなさん、そして案内に協力して頂いたみなさま ありがとうございます!そして、今後とも、よろしくお願い致します。またぜひ次回も企画をしたいと思います!

(おまけ)
15日はむっとした下り坂目のお天気で、場所によってはヤマビルがいました。牡鹿半島では近年ニホンジカが増えて大きな問題になっています。
宮城県では平成20年度に「牡鹿半島ニホンジカ保護管理計画」を策定して保護管理の目標を設定しました。その後、平成27年度に「宮城県ニホンジカ管理計画」に改定して現在も対策を進めています。このような話は知っていましたが、今回、ヒルの生息状況を実際に見てみると、やはり哺乳類(シカ)が増えているのだなと実感をしました。
地域全体の保全、振興、管理計画などについて、しっかり取り組んでいく必要性を感じた一日でもありました。

山の自然学クラブでは継続的に、宮城県三陸地域で地域の自然、地質や地形、植物などを観察する自然観察会を実施しています。活動の内容やご案内はこちらをご覧下さい(ホームページの案内にリンクしています)。

今回実施した 2018年7月15日 牡鹿半島観察会のご案内チラシです。