山の自然学クラブ 事務局ブログ

事務局へ寄せられた、会の活動報告や、会員のみなさまのご活躍を発信します。絵日記担当:中村が更新しています。

日本研究のふるさと・南三陸で、地質・地層・化石の探検!

三陸現地講座/南三陸町・歌津の地質探検!

2016年11月12日~13日は、今年2回めの鎌田耕太郎先生による地質観察会を実施致しました。今回は気仙沼から少し出て、お隣の南三陸町、歌津地区を観察しました。
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歌津では半島部(東側)から内陸側(西側)にむけて、約2億6千万年まえ(!)からの地層が順に観察できます。地質図で見ると、こんな感じに!すごいですね!


この地質図は鎌田先生が調査して作成されたものです。この地区の断面図もついていますので、この地区の構造がよくわかります。
(鎌田耕太郎,1993,5万分の1地質図幅「津谷」,地質調査所)
まん中あたりにある、段になって見えるところがPT境界です。館浜のところがたいへんわかりやすく観察できる絶好の場所だったのですが、なんと今回行ってみたら道に埋まってしまっていました。たいへん残念です。

地質図でもわかる一番ふるい、2億6千万前ころの地層(末の崎層)が半島の東側・石浜で観察できます。
鎌田先生、「海水面が下がると、その先の海の中にもっと古い層が見られるかもしれません」と参加者の想像をかきたてます。実際そのようなのですが。

細かい泥が積もってできている層で、この地層が堆積した場所は深い海の海底だったことがわかります。しかしよく見ると間に何回も砂の層が挟まっています。この理由について先生からは、深い海底にも大量に砂が流れ込む海底地すべりのような現象が起きたのだと考えられると説明がありました。そして中には泥に大小さまざまな石が、しかも丸い石だけが入っている層もあります。
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こんなにたくさんの石が混じる現象とは、まったく想像がつきません。地球の歴史の中には、たくさんの出来事があったのでしょう。この地層を形成している海底は南半球にあった頃の話です。そこから大地は大いなる旅をしてきたことでしょう。

歌津と言えば、ギョリュウ(魚竜)も有名です。
ギョリュウはイルカによく似た姿の爬虫類で、恐竜と同じ時期にもいた海の生き物です。南三陸地域では化石がたくさん見つかっているそうです。ウタツギョリュウやクダノハマギョリュウなど、歌津の地名がついた種もあります。
現地保存されている化石産地では、ちょうど工事中だったようで、いつもかぶっているアクリル板が外されていました。直接観察でき、たいへんラッキーなタイミングで観察できました!!
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今回の目玉は、ナウマン博士が発見した(論文で報告した、という意味です)、皿貝の二枚貝(モノティス)を見に行くことでした。三陸道の工事で現地までは入りやすくなっていますが、もともと砂地の地層なので、どうしても風化が激しいようです。貝の化石は今回はちょっとわかりにくくなってしまっていました。
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ただ、この層がすべて同じ貝でできていることはわかります。これは変わった状態です。同じ種類の貝だけがこれだけ固まって見つかる理由はまだわからないのだそうです。たしかに、なかなか自然にそういう状態の場所はないかもしれません。

今回はこのあと、韮の浜、細浦とここの地名のついた地層を観察しながら堆積環境を説明して頂きました。そして、その時代に生きた生き物の化石をたくさん見つけることができました。かわいいアンモナイトも!
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数日前までは冬の寒さだったのですが、この週末はぽかぽか陽気で、屋外での観察は少し汗ばむほどの陽気でした。ほんとうによい観察日和になって、ほっとしました!

山の自然学クラブでは継続的に、宮城県気仙沼市の「海べの森をつくろう会」と共催して気仙沼地域の自然、地質や地形、植物などを観察する自然観察会を実施しています。活動の内容やご案内はこちらをご覧下さい(ホームページの案内にリンクしています)。
NPO法人 山の自然学クラブ [三陸・北上地域の活動]

今回参加した当会の会員から、南三陸町の及川議員をご紹介頂きました。及川さんは今回の観察会に同行して下さいました。地域にすばらしい素材があることを実感して頂けたら嬉しいです。

今回も海べの森をつくろう会のみなさん、現地からご参加下さったみなさん、そして山の自然学クラブのスタッフのみなさんにたいへんお世話になり、有意義な企画になったと思います。みなさま、ありがとうございます。