山の自然学クラブ 事務局ブログ

事務局へ寄せられた、会の活動報告や、会員のみなさまのご活躍を発信します。絵日記担当:中村が更新しています。

あきる野で春を感じる一日・日帰り現地講座

山の自然学講座2017現地講座「あきる野

2017年3月25日は、全10回で開催している【山の自然学講座2017】の現地講座「あきる野」です。春を感じる、すてきな一日となりました。

9時過ぎ、東秋留に集合して、秋川沿いの河岸段丘を南北に横切りながら歩きました。
駅があるのが小川面、そこから秋留原面まで一度上がって、西に広がる平らな形を見渡しつつ、西方の山を見上げます。
北から東方面を広く見渡すことができ、眺めのよい高台を形づくっている、秋留原面の崖の上に二宮神社のお社が、そして崖の下からは豊富な湧水が「二宮神社のお池」となっています。東京の湧水57選に選ばれている豊富な湧き水をたたえる大きな池で、東へ流れる川の水源になっています。

多摩川と秋川がつくった段丘面は、たいへん小さな段差もありますが、歩くとその高さの違いがよく実感できます。
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この川の右岸側と左岸側、高さが違うのがわかるでしょうか。地形を利用して小学校が建てられているのかもしれません。

そして、そのハケの中に、難透水層があると、そこが湧き水の出るところとなり、水源として大切に利用されてきたようです。洪水の心配の少ない高台で、水が近くから得られるのですから、住環境としても適していたことでしょう。付近にはかつては湧水湿地も多くあったとも言われているようですが、たしかに、そのことが納得できる地形です。
途中、前田耕地遺跡を見学しました。付近にあった住居跡を復元しているとのことです。このあたりは縄文時代からの遺跡が多くあるとのことですが、春の一日、たいへん気持ちよく過ごせたことを実感した後では、そのことも納得できます。

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江戸時代につくられたであろう霞堤、これで耕地が格段に増えたのではないでしょうか。この地域ではたいへん古くから人が生活してきているわけですが、技術の進歩などと共に、このように耕作できるところを増やすなど、自然と共に歩んできた歴史がよくわかりました。近年、洪水が少なくなったことも影響しているのか、堤の間や低いところの土地利用も進んでいるようです。このことにはいろんな見方があるかもしれません。
堤には桜が植えられており、大きく育っています。年によっては春先の気温が暖かく、この堤の桜の下を歩く年もあります(桜が咲いてしまうと、カタクリとはちょっと時期がずれてしまう、というジレンマもありますが;)

切欠は都立滝山自然公園の一角でもありますが、地元の皆さんによって大切に守られてきた里山だそうです。その中の一部の斜面にカタクリの群生地があります。今年はお花の具合はどうでしょうね?と話ながら歩いていきますと...
 咲いています!参加者のみなさんも大喜びです。ちょっとだけ早めだったでしょうか、この日はつぼみの状態の個体が多いようです。


さて、しばらくお花を楽しんでいると、ここで辻村先生から、なぜここだけにカタクリが群生しているのでしょう?との問題が出されました。立地を観察して、カタクリの生育条件、なぜここが適しているのかみなさん各自で考えましょう、との出題です。
写真を撮りつつ、散策しつつ、皆さんそれぞれゆっくり観察しました。最後にみんなで集まって答え合わせ。そして辻村先生たちが調査をなさって導き出した様々な環境条件からの答えを教えていただきました。
お天気もよく、木漏れ日の中楽しい そして充実した一日になりました。
辻村先生は自然の中で人が暮らすこと、自然に合わせたり利用したりしながら歩んできた人の歴史、そして気候や環境の変動によってどのような影響が出るのかなど、たいへん広く講義をして下さいます。
参加したみなさんも、自然と人との関わりについてそれぞれ考えることができたのではないでしょうか。

辻村先生、大変お世話になった幹事のみなさん、そして参加してくださったみなさん、ありがとうございます。

2017年初_大蔵喜福理事長メッセージ

2016年会報・はじめに 時代の求めるもの、若者をどう取り込んでいくか

山から始まる自然保護(当会年会報)16号 2017年2月22日発行より
大蔵喜福理事長 巻頭言

 今年は、5月9日のマナスル登頂60周年、8月11日、初めての「山の日」が国民の祝日として実施され、山関係の催事や行事が長期間続き、海外の山は別にしても国内の山に因むいろいろな催しは、山の日を中心に大いに盛りあがりを見せたようだ。山の日の目的は多角的で環境や生活の課題も含まれ、自然からの恩恵を代々引き継いでもらうための自然保護保全の意味も大きいが、その祝日模様は山登りの日といった感が大に思われた。山の日は『山に登る』というのがやはり一般からすればわかりやすいことなのかも?

 だが、我々山好きの自然愛好家には、山歩きの都度、ただ歩くのではなく、自然のいろいろな変化や異常な状況を観察する役目があり、その自然からのメッセージをインタープリーティングする義務を持つと常々思っている。日本の大自然の環境問題を町場に居て、とやかく言うことは意味の無いことで、山に入り登らなければ始まらない。
 環境省の自然観察指導員にしても、山に行く職業の人、山に居る職業の人でないと役に立たない。だから登山ガイド、山小屋、救助隊、ボッカ、林業などの仕事人が多いのはうなずける。でも見回るだけでなくしっかり観察して、調べ、明確に記録し報告をすることが大切で、見るだけで何もしないのでは困りものだ。私もここ10年くらい指導員を続けているが、観察はするが、調べて記録し報告となるとすべて完璧にできてはいない・・・反省しきりである。
 さて、その反省の殆どが自らの登山スキルに余裕がないことが要因になる。荷物が背負えない、早く歩けない、岩場をスムーズに登れない、すぐ疲れる・・・できればいつまでもスキルの落ちない、すばらしい体力と知力が備わったアンドロイドのような身体がほしいと思う。単独で何処へでもよじ登れて、サッサと移動できる。それなら高くて険しくて、誰もいけないような地形の大自然を見ることもでき、さらに観察地域も広範囲になる。そこには何が?そこの環境はどう?とドローン張りに観察できればすごいことだ。だが人間は所詮人間、年を重ねると体力・気力がドンドン落ちる。山へ登れなくなれば、高山植物にしてもライチョウなど高山の鳥、小動物、蝶や昆虫・・・氷河期のレリックとして世界に誇るあるいは残る「これら絶滅危惧種をどう守っていくか」といった崇高な目的も、スキルの衰えと共に乖離していくような気がしてならない。
 そこで、高齢化した我々は何をしてこの体たらくに抗していくか?大問題。放っておくと、組織そのものがなくなる・・・えらいことだ。それには自然大好きな若者を山登りに引っ張り込むことを実行に移さねばならない。まず山登りの崇高な意義と目的を共有する、そして一緒に楽しみを覚える活動をする、さらに自らを鍛え高める鍛錬など、我々が新しい仲間=若者と一緒に行動する山行 (機会)を沢山持つことである・・・当然な答えである。ところがそう簡単に若者は『山好き』になってくれない。世の中不景気が続き、夢や希望を持たない年金暮らしのような若者には、山を考えることは無理なのか??いやいやそんなことは無いはず!!我々の若い頃だって同じようなもの。多少は嬉しやのバブルも経験したが、好きなものは好きで、どこかを我慢してでも山登りの資金はひねり出す努力はいっぱいしてきた。そう考えると自分たちの経験を生かせばいいことで、登山なら、市井の山岳会を再生させること。会ができれば次世代の養成ということは不可能ではない。

 われわれ”山の自然学クラブ”も同様に、登山に力を入れようとすれば若者には響くと思われる。屋外の登山教室や自然観察も登山の一部としていろんな団体とコラボし、学習とスキルアップに力を注ぎ、その上で自然学の発展を想像してみたいと思い始めた。来期の目標、今までも少しずつ言ってきたが、本当に実践する年にしたい。手始めに少し無茶でも油断なら無い山登りでスキルを磨きたい。乞うご期待!! 
 遭難の8割が団塊世代老害といわれないように心身頭脳ともさらに鍛えねば成るまい。本年も会員皆さまのご協力を節にお願い致します。

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「山の自然学講座2017」ヤマケイオンラインに掲載 して頂きました

「山の自然学講座2017」をヤマケイオンラインに掲載!して頂きました

今年2017年は3月4日から始まる「山の自然学講座2017」。
2017年2月15日にヤマケイオンラインでご紹介下さいました。

www.yamakei-online.com

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山の自然学講座は全部で10回、個別に好きな会を選んで受講して頂くことができます。
山の地形や高山植物、気候などについて広範に学んで頂くことができます。

いつもの山歩きが”もっと”楽しくなる!
自然を楽しむ山歩き、そのきっかけにしてみませんか?

受講申込、お待ちしています!
講座のご案内、内容や日程はホームページをご覧下さい。
特定非営利活動法人(NPO法人) 山の自然学講座2017 開催要綱

申し込みフォームもこちらのサイトにございます。

景信山でお餅つき!

新年のお祝い・景信山でお餅つき!

2017年、新年最初の行事は関東平野を見下ろしながらのお餅つき!でした。
1月14日、新しい年を祝うため総勢13人のメンバーが集結、(なんて。絵日記担当は自分が飲みたいものしか用意もせず、ただ便乗参加しただけなのですが)

今年一番の寒波です!という天気予報にも怯まず、高尾駅に集合した面々、駅前からバスに乗車して子仏に向かいました。バスは甲州街道を行き、途中、小仏の関を通り、武蔵国を脱出!とはいえ、この日は稜線までしか行かないのですが...;

気温は低かったのですが、風がなく日差しがあったので、登る道はぽかぽかしていました。

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ゆったりあがって景信山へ!山頂からは相模湾が光ってキラキラきれいです。スカイツリーも怪しく見えています。

茶屋の方が蒸して下さるお米を待つ間に新年の乾杯!ほとんどの方がフライングでしたが; 幹事の秦さんはお米が多いのでは?とご心配なさっていましたが、お願いした3升はちょうど良かったようです。臼にちょうど1回分です。
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みんなで息を合わせてつく役と返し役を交代します。

幹事の秦さんと室村さんがいろいろご準備下さったので、そのほかの参加者は当日楽しむだけですんでしまって、申し訳ないようですが、存分に楽しませて頂きました!
幹事のおふたり、そしてご参加いただいたみなさん、楽しい、そしておいしい1日を、
ありがとうございます!

今年もありがとうございます

活動発表会 ありがとうございました

2016年の最後の行事、活動発表会と忘年懇親会が12月17日に行われました。
雲ひとつない晴天の新宿中央公園に みなさんが集まりました。

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今回はエントリーして下さった会員7名それぞれの方から、
長年の活動、そして、最近の活動 順番に 紹介して頂きました。

長谷川博文さん 「ネパール藪椿普及活動/10年を振り返って」
山川 陽一さん 「山男 山を下りる~自然エネルギー普及活動奮闘記~」
石井 誠治さん「japanといわれる漆に秘められた謎を探る」
大蔵 喜福さん 「高齢登山者と遭難について」
大森弘一郎さん「ゴジュンパ氷河調査の報告」
池田 昌史さん「おもしろい東京の地形」
中村 華子「山の自然学クラブの自然再生活動ご報告」

そして、当日加わって下さった 門司和夫さんからは
インドネシアで今年5月、田部井淳子さんとの海岸登山を経験したことを写真入りで紹介して頂きました。
また、傍島夏生さんは地元・鳥羽で進むメガソーラー事業への疑問を語り、みなさんと一緒に意見交換をしました。
終了後の忘年会が目的の方もあったでしょうか、参加者みんなで多いに盛り上がりました!

2017年は新年懇談山行・景信山で餅つき会を企画しています!
計画を立てて下さった秦さん、室村さんがはりきって準備中。

ぜひぜひみなさん ご参加下さい!

富士山・樹海の放送

富士山・樹海の放送に千葉さんご出演!

NHKの人気番組の一つ、ブラタモリ
山の自然学講座の内容もそっくりな話題のことがありますが...

今年2016年の放送の中で、10月15日と10月22日の2回は富士山の樹海、10月29日は吉田口周辺と、富士山周辺で3回の放送がありました。
#50と#51は、富士の樹海 この放送回に、当会でもお世話になっているアジア航測の千葉先生がご出演! たいへん嬉しかったです!
いつかは出演されるかと思っていましたが、満を持して富士山の放送回にご出演されました。

山の自然学クラブでは、赤色立体地図を始めて作成した頃、山の自然学講座をお願いしたことがあります。
このころできただった立体地図を、新鮮な感激でみんなで眺めたこと、「内臓マップ」と呼んでいることを話して下さった千葉さんの笑顔が思い起こされます。

そしてみんなで地図に表された地形を確認しながら、富士山麓、樹海の中を歩きました。
千葉さんは、伊豆大島では噴火したときにいらっしゃったという経験をされ、その後に現地講座でその現地をご案内頂きました。

ご活躍、今年の嬉しい話題のひとつです。
NHKの放送回のホームページのスクリーンショットを掲載させて頂きます。

ブラタモリ 番組ページ から該当回のページを引用させて頂いております。
http://www.nhk.or.jp/buratamori/index.html

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日本研究のふるさと・南三陸で、地質・地層・化石の探検!

三陸現地講座/南三陸町・歌津の地質探検!

2016年11月12日~13日は、今年2回めの鎌田耕太郎先生による地質観察会を実施致しました。今回は気仙沼から少し出て、お隣の南三陸町、歌津地区を観察しました。
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歌津では半島部(東側)から内陸側(西側)にむけて、約2億6千万年まえ(!)からの地層が順に観察できます。地質図で見ると、こんな感じに!すごいですね!


この地質図は鎌田先生が調査して作成されたものです。この地区の断面図もついていますので、この地区の構造がよくわかります。
(鎌田耕太郎,1993,5万分の1地質図幅「津谷」,地質調査所)
まん中あたりにある、段になって見えるところがPT境界です。館浜のところがたいへんわかりやすく観察できる絶好の場所だったのですが、なんと今回行ってみたら道に埋まってしまっていました。たいへん残念です。

地質図でもわかる一番ふるい、2億6千万前ころの地層(末の崎層)が半島の東側・石浜で観察できます。
鎌田先生、「海水面が下がると、その先の海の中にもっと古い層が見られるかもしれません」と参加者の想像をかきたてます。実際そのようなのですが。

細かい泥が積もってできている層で、この地層が堆積した場所は深い海の海底だったことがわかります。しかしよく見ると間に何回も砂の層が挟まっています。この理由について先生からは、深い海底にも大量に砂が流れ込む海底地すべりのような現象が起きたのだと考えられると説明がありました。そして中には泥に大小さまざまな石が、しかも丸い石だけが入っている層もあります。
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こんなにたくさんの石が混じる現象とは、まったく想像がつきません。地球の歴史の中には、たくさんの出来事があったのでしょう。この地層を形成している海底は南半球にあった頃の話です。そこから大地は大いなる旅をしてきたことでしょう。

歌津と言えば、ギョリュウ(魚竜)も有名です。
ギョリュウはイルカによく似た姿の爬虫類で、恐竜と同じ時期にもいた海の生き物です。南三陸地域では化石がたくさん見つかっているそうです。ウタツギョリュウやクダノハマギョリュウなど、歌津の地名がついた種もあります。
現地保存されている化石産地では、ちょうど工事中だったようで、いつもかぶっているアクリル板が外されていました。直接観察でき、たいへんラッキーなタイミングで観察できました!!
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今回の目玉は、ナウマン博士が発見した(論文で報告した、という意味です)、皿貝の二枚貝(モノティス)を見に行くことでした。三陸道の工事で現地までは入りやすくなっていますが、もともと砂地の地層なので、どうしても風化が激しいようです。貝の化石は今回はちょっとわかりにくくなってしまっていました。
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ただ、この層がすべて同じ貝でできていることはわかります。これは変わった状態です。同じ種類の貝だけがこれだけ固まって見つかる理由はまだわからないのだそうです。たしかに、なかなか自然にそういう状態の場所はないかもしれません。

今回はこのあと、韮の浜、細浦とここの地名のついた地層を観察しながら堆積環境を説明して頂きました。そして、その時代に生きた生き物の化石をたくさん見つけることができました。かわいいアンモナイトも!
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数日前までは冬の寒さだったのですが、この週末はぽかぽか陽気で、屋外での観察は少し汗ばむほどの陽気でした。ほんとうによい観察日和になって、ほっとしました!

山の自然学クラブでは継続的に、宮城県気仙沼市の「海べの森をつくろう会」と共催して気仙沼地域の自然、地質や地形、植物などを観察する自然観察会を実施しています。活動の内容やご案内はこちらをご覧下さい(ホームページの案内にリンクしています)。
NPO法人 山の自然学クラブ [三陸・北上地域の活動]

今回参加した当会の会員から、南三陸町の及川議員をご紹介頂きました。及川さんは今回の観察会に同行して下さいました。地域にすばらしい素材があることを実感して頂けたら嬉しいです。

今回も海べの森をつくろう会のみなさん、現地からご参加下さったみなさん、そして山の自然学クラブのスタッフのみなさんにたいへんお世話になり、有意義な企画になったと思います。みなさま、ありがとうございます。